南山踏雲録 【なんざんしゅううんろく】 文久三年(一八六三)八月、尊攘派の草奔たちによる天忠組が大和に挙兵する。だが、間もなく京都の政変によって追われる身となり、十津川、吉野の山中を一ヶ月余敗走の末、主だった者らは討死、刑死という悲劇的な結末を迎えることになった。これに加った中の指導的立場にあった一人で、国学者・歌人の伴林光平が刑死を待つ京都の獄にあって、戦況戦跡を静かに振り返りながら遺した記録が『南山踏雲録』である。 早くから光平に対する讃仰の念ひとかたならぬものがあった保田は、戦時下に同書の詳細な註釈に取り組んだ。本書はその評註を巻頭に、光平の師伴信友の一書に従いつつ南朝の伝統を回想した「花のなごり」、さらに光平歌集の註解、光平伝、十津川郷士伝を併録して、天忠組義挙の精神史的意義を明らめようとしたものである。 -幕末辞典-