佐久間象山 【さくましょうざん】 文化8年〜元治元年(1811年〜1864年) 国際的港町・横浜。横浜は日本の文明開化発祥の地となった。この横浜開港のため東奔西走した獅子がいた。幕末の先覚者・佐久間象山である。開港地を少しでも江戸から遠ざけたい幕府に対し象山は、横浜に港を開き、江戸への物資輸送路を確保しつつ、ここを先進文明の受け口とすべきことを叫び続けた。やがて、下田を継ぐ港として横浜開港が実現し、文明開化は加速した。 象山は東洋の精神文化と西洋の物質文明の両方に通じ、砲術家・科学者・医学者・言語学者・政治家・詩人・儒学者という多彩な顔を持ち、各々の分野で輝かしい業績を残している。インターネットの原型である電信の実験を日本で始めて行ったのも象山である。 その卓越した才能・先見性・スケール・合理性・信念・行動力に、周囲は必ずしも追随できず、彼の行く所には波風が絶えなかった。苦心のオランダ語辞書出版・種痘・殖産興業策など、常に反対勢力との戦いだった。 やがて弟子・吉田松陰は師匠・象山の「世界へ!」との志を受けて密航を試みるが失敗する。松陰に授けた詩により象山の密航援助が発覚し、9年もの幽閉生活を強いられる。赦免後には幕府や朝廷に働きかけ、開国へのレールを敷いたが、それが仇となり攘夷派に暗殺されてしまった。 象山の門を叩いた弟子たちのなかには、時代を動かした吉田松陰や勝海舟、フランス語学の先駆者・村上英俊らがいた。肉体は滅べども、東洋と西洋の融合を指向した象山の熱き魂は、これらの弟子たちによって綿々と受け継がれ、横浜から始まる日本の文明開化として花開いた。横浜市は象山の功績を称え野毛山に記念碑を建立した。 -幕末辞典-